003.さよなら、また明日 #003

 直接の因縁から先に相談した悠斗と吉良が、暁の復帰に反対したのは当然だ。
 一期での仕打ちを思えば。
(だとしても)
 あいつが俺と一緒に“vapor⇔cone”を立ち上げたことや、初代バンマスだった事実を消すことはできない。
 無碍に扱えば余計な恨みを買い、二期のメンバー、特に省介に危害が及ぶ可能性が濃厚だ。
 だから、考えた末に苦渋の決断をした。
 バンドのスタジオ練習の帰り道、足を繰り出しながら口を開く。
「省介。――俺……、“vapor⇔cone”に暁を戻すことにした」
 悠斗と吉良に頼んで二人きりにしてもらったのは、伝えなきゃいけないのに言い出せなかった話をする為。
 元々安定した性格の省介だけど、このところの俺の様子のおかしさに気付いていたこともあって動揺はなかった。
「そうか」
 怒りをぶつけられても仕方のない内容なのに、責めるどころか気遣うような表情が罪悪感を増大させる。
「……ごめん……」
 目を逸らして声をしぼり出してから、「でも」と笑みを作って向き直った。
「いきなりで納得できないだろうし、お前にとっては理不尽だし、他になにか方法を――」
 感情面で受け入れられていないのは俺の方だ。
 あれ程悩んだにも関わらず、元々が本意ではなかったことから決心は簡単に揺らぐ。
 矢継ぎ早に話す俺に省介はどこか悲しそうに微笑み、やんわりと制した。
「そんな顔するなよ、冬哉」
 言葉に詰まる。

 ――“そんな顔”って、どんな顔だよ。

「時期が早まっただけだし、俺だって同じ選択をしたと思う」
「……ん……」
 穏やかな物腰で逆に慰められ、益々情けなくなった。
 うなだれて少し歩いたところで足を止め、つられて振り返った省介に真剣に告げる。
「せめてちゃんと区切りをつけられるように、暁に頼んでみるから」
「いいよ、そんな気を遣わなくても」
 視線を合わせたまま、棘のない笑顔でぽんと叩かれた。
「明日見てやるから、パート譜書いとけよ」
 立て続けに数回頷き、「ああ」と両口端を上げる。
「じゃあ」
 いつもと変わらず明るく手を振られ、今度こそ本当に笑って返す。
「また明日」
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INDEXExceed Mach 1!(シリーズ)
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