003.さよなら、また明日 #006

 ビジュアル面にも力の入ったバンドやグラム系も好きだ。
 だから、人目を惹くメイクや派手なステージ衣装選びは楽しい。
 周囲が俺を評価する際の“非常に恵まれた端麗な容姿”との親和性も高く、フロントマンとして大きな武器になることもわかっている。
 それはまた、暁が示した“vapor⇔coneV”の活動方針とも重なっていた。
 最優先されるのは頭数。
 ファンの音楽対する興味の度合いなんてどうでもいい。
 オーディエンスは“U”時代と様変わりし、会場にはいつも女の子達の声援が満ちている。
 賞賛も、パブリックイメージとして選んだ見た目に関するものが目立つようになった。
 だとしても、演奏を(或いは演奏“も”)楽しみにしてくれている層の方が多い。
 きっかけがなんであれ、歌や曲に耳を傾けてもらえるようになることだってある。
 “一期一会”を忘れたことはないし、意に沿わないライブでも手を抜いたことはなかった。

(けど)

 ――聴いてもらえているかすら疑わしいのに、なにを真剣に歌ってるんだろう。

 ライブ後に感じる言いようのない空しさの中で、そんな思いに囚われる自分が大概嫌になる。
 それでも、今はまだ“vapor⇔coneV”を投げ出す訳には行かなかった。
 俺自身の目的の為にも。
 思い入れが強くなる程、失った時のダメージはでかくなる。
 このバンドを踏み台としか思っていないあいつに愛着をわかせるには、“vapor⇔coneV”を大きく育てる必要があった。
 大切にしてきたものをむしり取られる痛みと喪失感、加えてそれを阻止できなかった無力さを呪う気持ちを思い知ればいい。

 あの歌を歌える日がきたら、その後はまたやりたいことをやろう。
 今あるものを全部捨てての再スタートで。
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INDEXExceed Mach 1!(シリーズ)
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