005.箱庭が壊れた日 #006

 “Liaison”の今後の活動についての事務所との話し合いを前に、悠斗の提案で一度集まることになった。
 プライベートでということになったのは、バンドメンバーだけで忌憚のない意見を交わしたかったから。
 二人の自宅からの立地の便のよさもあり、場所は俺の家に決まった。
 一人暮らしの一軒家である為、遠慮がいらないこともある。
「冬哉の脱退の件の前に」
 人見と俺を見て悠斗が切り出した。
「自分以外の全員がやめたとして、それでも“Liaison”を背負って行くのと、解散するのと、どっちがいい?」
 質問の意図をはかりかねての沈黙を挟み、人見が答える。
「冬哉も悠斗も利佳も入れ替わってたら、俺にとってはもう“Liaison”じゃない……」
「形だけ残しても、名ばかりになるんならなんの意味もないしな」
 大事なのは“Liaison”という容器じゃなく、中になにが入っているか。
 と、質問をしてきた当人が可笑しそうに肩を震わせているのが見えた。
「悠斗?」
「そこは笑うとこ……?」
 噛み殺していたそれを収め、悠斗が明かす。
「今の、“vapor⇔coneV”の解散前に冬哉からされた質問なんだよ。俺は、意訳すると利佳と同じこと言った」
 なんだかんだで似たもの同士じゃねぇか、と思ったらなんだか可笑しくなったのだという。
(確かにな)
 あんな風に言い争いをしておいて、根本では同じように感じてるなんて。
「冬哉は……?」
「“解散かな。結局は別のバンドになっちまうし”って」
 人見に返した悠斗へ目をやる。
「じゃあ、人見と――」
 こくりと頷かれた。
「底にあるのは、今のメンバーじゃなきゃ“Liaison”にはならないってことだろ。“事実上の”も含めて解散したくないなら、全力で冬哉を止めるしかない」
「でも」
 嫌がる冬哉を俺達の都合で縛り付けることには罪の意識がある。
 けど、子供の頃から離れることなくあいつを見てきた悠斗の見解は違うらしい。
「今のまま脱退させたら、あいつはまた後悔を引きずることになる。だから“Liaison”としてちゃんとライブをやった上で決めさせるんだよ」
 思うところあるように言う悠斗を、人見が不安そうに窺う。
「そこで気持ちを動かせなかったら、……解散ってこと……?」
「ああ」
 難しい顔で答えてから、雰囲気を和らげて悠斗が聞いてくる。
「もちろん無理に付き合わせる気なんてないし、潔く“Liaison”を終わらせる方向へ持って行ってもいい」
「俺は、悠斗の案に賭ける……」
 決心したように人見が同意する。
「俺も乗るよ」
 この四人でやり直せる機会をもらえるなら、冬哉を待つ価値はある。
 だとしても、あいつの気持ちも尊重したかった。
「――ってことを前提として、冬哉の返答によっては撤回するかもしれない」
「え」

 あいつが俺をどう思ってるのか。
 他のメンバーの事情を考えなくていいなら本心ではどうしたいのか。
 冬哉自身の口から聞きたかった。
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007
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